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連載コラム ハナミズキサンポ

ハナミズキサンポ

北と南の間で

   なんかこう、ぼうっとしちゃうことってありませんか。ようやく春のどたばたが落ち着いて、でもまだ夏本番じゃなくて、衣替えはしたけど、はしゃぐには早い、みたいな。
 そういうときにね、ふと、ムーミンを思い出したりします。実は私、昭和生まれなもので、ムーミンのアニメーションをリアルタイムで見てたんですよ。往年の大女優、岸田今日子さん演ずる、あの「もわん」としたムーミンの声。素晴らしかった。あれを聴いていると、ぼうっと眠たくなります。

 橋の上に腰かけるスナフキン。パイプをふかすムーミンパパ。そして考えごとをするムーミン。この世界では、ぼうっとすることが許されている気がします。急がず、慌てず、ゆっくりと。立ち止まってみることも悪くないよ。ムーミンは、忙しない私たちのことを、立ち止まって見ているような気がします。

 ところでムーミンショップに行って、驚きました。最近のムーミングッズって、すごくお洒落なんですな。北欧デザインのシャープさと、原作のペン画っぽいシンプルさが絶妙にマッチ。カフェでリトルミイの描かれたコーヒーを飲みながら、感心してしまいました。

   ぼうっとするなら、海辺もいい。いや、海辺がいい。ノースショアの潮風に吹かれて、目を細めたい。ああ。そういえば私、ハワイにあるクアアイナの本店に行ったことがあるんですよ。あそこは、いい場所だったなあ。ウッドデッキにもたれて、かりっかりのポテトをのんびりとつまむ。ジューシーなお肉と野菜たっぷりのハンバーガーは、行儀悪くてもちょっと潰しながら食べるといいんだよ。

 そうだ。どうせなら持ち帰りにしてもらって川辺で食べよう。童話の主人公のように石に腰かけて。大きな口を開けて、ハレイワ生まれのハンバーガーを一口。汁がたれたら、舐めればいいさ。追加でパイナップルでも挟んだら、夏へ向かう覚悟ができるかもしれないな。あくまでものんびりとですけど、ね。

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Text by 坂木 司

1969年、東京生まれ。覆面作家。2002年に、ひきこもり探偵・鳥井真一とその友人・坂木司を主人公にした連作短編集『青空の卵』でデビュー。その他の作品は「ワーキング・ホリデー」、「和菓子のアン」など多数。

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