Dogwood Plaza

連載コラム ハナミズキサンポ

ハナミズキサンポ

オリジナルな笑顔

  「知らない街に行ったとき、スタバがあるとほっとするんだよね」
  友人が、バニラクリームフラペチーノを前に、そう言っている。
  まあ、チェーン店だしね。同じ雰囲気で同じ味、同じ値段で同じサービスっていうのが安心するんだろうね。だってほら、初めての店って緊張するじゃん。中が見えないとことかさ。彼は、「同じ」が「安心」の理由を矢継ぎ早に喋ったあとで、ぽつりとつぶやく。
  「ていうかビビりだし、オレ」
  別にビビリでいいじゃん。私はホットのアメリカーノを啜りながら言う。
  だってチェーン店は、他にも沢山ある。コーヒーを出す店なら、専門店の他にハンバーガーショップやベーカリーカフェなど、選択肢は様々だ。なら、なぜその中でスターバックスを選ぶのか?

  彼はスタバマニアというわけではない。タンブラーもカードも持っていない。
  「え? なんで、ってーーなんでだろう? まあ、コーヒーがおいしいのは確かだけど」
  「うん。あと私は、季節感があるのが好きだな。春の桜や夏の桃もおいしかったし」
  「これから秋は、コーヒーの季節だよねえ」
  うん、とうなずきながら、私はソファーに背中を預ける。このくつろげる感じは、他のチェーンにはないかもしれないな。特にこのドッグウッドプラザ店は、フラワーショップが近いせいか、グリーンも豊富で気持ちがなごむ。
  「甘いの好きだから、ってのもあるかな」
  バニラクリームフラペチーノのカップを持ち上げた彼が、あれ、と小さな声を上げる。
  「ああ、これ、初めてやってもらった。嬉しいもんだね」
  そこにあったのは、マジックで描かれた小さなスマイルマーク。そういえば、スタバってどこでも店員さんが優しい気がする。私の言葉に、彼が「それだ」と顔を上げた。
  「『同じ優しさ』が好きなんだよ、オレ」
  ほら、ビビリだからさ。そう言って彼は、幸せそうに笑った。

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Text by 坂木 司

1969年、東京生まれ。覆面作家。2002年に、ひきこもり探偵・鳥井真一とその友人・坂木司を主人公にした連作短編集『青空の卵』でデビュー。その他の作品は「ワーキング・ホリデー」、「和菓子のアン」など多数。

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