Dogwood Plaza

連載コラム ハナミズキサンポ

ハナミズキサンポ

リニューアルの誘惑

  リニューアルって、正直困る。知ってしまうと行ってみたくなるし、なによりお財布の紐がゆるくなるから。
「言ったら、女子部分のコンビニだね」
  壁面に並んだミニサイズのマニキュアをつまみながら、友達がつぶやく。ここは、ITS′DEMO。
「他の店より早く開いてるしさ、コスメにアクセにバッグに洋服。ついでに雑貨まで置いてあってさ、始業前に助かりまくり。コンビニエンスってこういうことじゃん?」 「私は仕事帰りのがお世話になるかな。小腹減ったときにつまめるお菓子もあるし、たりなくなったふせんやカードとかのんびり見るのが楽しいよ」
  喋りながら雑貨のコーナーに移動して、ふと気づく。通路が広くなった。前は、立ち止まってたら他の人が通れないくらいだったのに。ゆったりしてて、いいな。
「ちょっと待って。これ、着てみる!」
  友達が秋冬の新作を持って、お店の隅に向かう。あれ、試着室が出来たんだ。前から洋服は可愛かったけど、着てみた感じが知りたかったんだよね。いいじゃんいいじゃん。
  お会計を終えた友達に、今度は私が提案する。

「ね、次はエクルーガレリアに行こうよ。こっちもリニューアルしたんだって」
  私はこのお店の、タオルハンカチが大好き。十二支のポイントがそれぞれについてて、プレゼントにぴったりだから。
「私もお母さんに買って行こうかな」
  友達がハンカチを選んでいる間、私は日本製のバッグを手に取る。すごく軽くて、使いやすそう。あ、でもインポートもので個性的なのも気になるなあ。 「やだ、これ可愛い!」
  思わず声を上げると、友達が振り返る。折り畳み傘。なんだけど、傘部分が飛行機の胴体で、持ち手が尾翼。柄は国旗風でロンドン、パリ、日本に、迷彩は空軍機かな。
「しかもこれ、超軽い」
  広げると大きいのに、すごいね。友達の言葉にうなずきつつ、私はお財布を取り出す。んもう、だからリニューアルって困るんだよね。嬉しいけど!

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Text by 坂木 司

1969年、東京生まれ。覆面作家。2002年に、ひきこもり探偵・鳥井真一とその友人・坂木司を主人公にした連作短編集『青空の卵』でデビュー。その他の作品は「ワーキング・ホリデー」、「和菓子のアン」など多数。

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