Dogwood Plaza

連載コラム ハナミズキサンポ

ハナミズキサンポ

リニューアルの誘惑

  寒くなると、温泉に行きたくなる。できれば毎週末、箱根や伊豆に行ってのんびりお湯につかりたい。その後、卓球や射的みたいにちょっと懐かしい感じのゲームをして、こんなには食べられませんよって感じの華やかなお膳がテーブル一杯に並んでたら、もう最高。
  でも仕事もあるし、そうそう旅行に出られるわけもない。というわけでいつものように買い物に出る。年末年始は買い出しが多くて大変だよなあ。そう思っていた矢先、レジで何か紙を渡された。
「ガラポンの抽選券です。どうぞ引いていって下さい」
  へえ、ガラポンってあれか。商店街の福引きとかでやってたやつ。ちょっと懐かしいな。
  一階の会場に着くと、親子連れで賑わっている。はずれてもティッシュの他にキャンディも貰えるから、子供が嬉しそうだ。
  取っ手を持って、ゆっくりひと回し。ガラガラ、ポン。はは、名は体を表すって感じ?
「あっ、おめでとうございます。一等、ショップ特賞です!」
  ガラポン係のお姉さんたちが、一斉に拍手。うわあ、恥ずかしい。でも嬉しい。
「こちらの箱から、くじをお引き下さい」
  照れながらくじを引くと、廻転寿司CHOJIROの『冬の珠籠御膳』というセットが当たった。それも二名分だって。気前がいいなあ。

  ちょうど昼前だったので、違う場所で買い物をしていた相方を呼び出してお店に向かう。
「あのう、これ、当たったんですけど」
  そう言って券を差し出すと、お寿司屋さんのお姉さんがにっこり笑う。
「おめでとうございます!」
  なんだかなあ。何かを頑張ったわけでもないのに、一日に何回もおめでとうって言われちゃったよ。いいのかな。でも、やっぱりなんか嬉しいもんだよなあ。
  けれど、出てきた料理を見てびっくりした。テーブル一杯に、料理が広がってる。
「え? ここって回転寿司のお店だよね?」
  お刺身、天ぷら、お寿司、それに煮物や焼き物、おまけにサラダやお吸い物と茶碗蒸しまで。相方の彼女じゃなくても、びっくりだ。
「あ、デザートのとき、コーヒーと紅茶どちらにされます?」
  これにさらにデザートがつくんかい! ちょっと笑いそうになりながら、コーヒーをお願いした。
  気づけば懐かしい福引きで遊び、テーブル一杯の料理に二人で笑ってる。温泉に行かなくても、大満足の小旅行になったのだった。

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Text by 坂木 司

1969年、東京生まれ。覆面作家。2002年に、ひきこもり探偵・鳥井真一とその友人・坂木司を主人公にした連作短編集『青空の卵』でデビュー。その他の作品は「ワーキング・ホリデー」、「和菓子のアン」など多数。

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